このページの要点
- 契約は、貸主の申込完了の通知が借主に到達した時に成立する形にする(民法522条1項、97条1項)。受付の通知は成立を意味しないと規約に書く。
- 本人確認で取得する情報は個人情報。利用目的を特定し、書面(電磁的記録を含む)で取得するときはあらかじめ明示する(個人情報保護法17条1項、21条2項)。申込内容の虚偽は、「重要な事項」に絞って解除事由にする。
- 18歳未満の申込みは、法定代理人の同意がなければ取り消すことができる(民法5条1項・2項、4条)。同意は借主の自己申告でなく、別の経路で確認し、18歳未満を受けない設計も選べる。
- 配送中の事故は引渡し前の事情として貸主側で整理し、貸出期間は引渡日から数える。到着時の確認と連絡期限は、受取時に確認できる事項に限って置く(民法615条、621条)。
結論:成立の時点、本人の確認、未成年者、配送と受取時の確認を、申込みの前に決める
レンタルは、貸し出す前の段階で揉めることが少なくありません。申込みを受けたのに在庫がない、配送したのに連絡が取れなくなった、申し込んだのが未成年者だった、配送中に壊れた、届いたものに最初から傷があった。これらは、貸出の条件を決める前に、「契約がいつ成立するのか」「誰が借りるのか」「どの状態で引き渡したことにするのか」が決まっていないために起きます。このページでは、物を貸す側を「貸主」、借りる側を「借主」、貸し出す物を「レンタル品」と呼び、申込みから引渡しまでを順に整理します。全体の地図は個人向けレンタルの規約・契約書の全体像にあります。
先に結論をまとめると、四つです。第一に、契約の成立は、貸主が出す「申込完了の通知」が借主に届いた時にします。申込みの受付と成立を別にしておくと、在庫や確認の結果で断る余地が残ります。第二に、本人の確認は、目的に見合う方法を選び、個人情報の取得の目的を示します。申込内容に虚偽があったときの扱いも、あらかじめ書いておきます。第三に、未成年者の申込みは、法定代理人の同意がなければ取り消すことができる(民法5条2項)ため、同意の取り方を決めます。第四に、配送中の事故と配送の遅れは、貸主の側の事情として整理し、届いたときの状態を確認する手順を借主に示します。
申込みから引渡しまでの流れ
- 申込み規約への同意、貸出品と期間の指定、確認画面を経て送信
- 受付申込みを受け取ったことの通知。ここでは契約は成立していない
- 確認在庫、本人・年齢の確認、決済の結果。承諾するかを決める
- 成立申込完了の通知が借主に届いた時に成立
- 発送梱包、同梱物、返却用の送り状。追跡番号の記録
- 受取確認到着日を引渡日とし、外観・付属品・動作を確認して連絡
成立より前の段階で断る自由を残し、成立より後の段階では解除の事由と手続を規約に書いておく、という整理です。
契約の成立時点:受付の通知と、申込完了の通知を分ける
民法は、契約は、契約の内容を示して締結を申し入れる意思表示(申込み)に対して、相手方が承諾をしたときに成立すると定めています(民法522条1項)。レンタルでは、借主が画面で貸出品と期間を選んで送信する行為が申込みで、貸主がこれを受け入れる意思表示が承諾です。意思表示は、その通知が相手方に到達した時から効力を生じます(同法97条1項)。メールで承諾を伝えるなら、借主のメールボックスに届いた時が、成立の時点になるのが原則です。
ところが実際には、申込みを送信した直後に、自動返信で「ご注文ありがとうございます」「お申込みを受け付けました」というメールが届く作りが多くあります。これが承諾なのか、単なる受付の通知なのかが曖昧だと、あとで、在庫がなかった、本人確認で断りたい、決済が通らなかったという場面で、借主から「契約は成立していた」と主張されることがあります。貸主は、契約が成立していないつもりで断ったのに、借主は債務不履行だと受け止める。この食い違いは、成立の時点を規約で一つに決めておけば防げます。
具体的には、規約に二つのことを書きます。一つは、申込みの受付の通知は契約の成立を意味しないこと。もう一つは、貸主が申込みを承諾する旨の通知(以下の条文例では「申込完了通知」)が借主に到達した時に成立することです。この二つを書いておくと、貸主は承諾の前であれば、在庫がないとき、本人確認ができないとき、配送できない地域のときに、申込みを断ることができます。断る事由は、規約に例として挙げておくと、借主にも見通しが立ちます。
規約例申込みと契約の成立
- 借主は、本規約に同意のうえ、貸主が定める方法により、レンタル品(貸主が貸し出す物をいう。以下同じ。)、貸出期間、数量及び配送先を指定して、貸出の申込みを行う。
- 貸主が申込みの内容を受け付けた旨を借主に通知しても、それによって貸出契約は成立しない。貸出契約は、貸主が申込みを承諾する旨の通知(以下「申込完了通知」という。)が借主に到達した時に成立する。
- 貸主は、在庫の状況、次条の確認の結果その他の事情により、申込みを承諾しないことができる。この場合、貸主は、その旨を借主に通知し、借主から既に受け取った金銭があるときは、遅滞なく返還する。
- 申込完了通知は、借主が申込みの際に登録した電子メールアドレスに送る。借主は、貸主のウェブサイトの申込履歴の画面でも、申込完了通知の内容を確認できる。
第4項のように、申込履歴の画面でも通知の内容を見られるようにしておくと、迷惑メールの設定などでメールが届かなかったという争いに備えられます。
書き方の例(一般的な例) 申込みの受付と、契約の成立を分ける
契約の成立時点と、貸主の断る自由
理由送信した時に成立する定めにしながら、貸主だけが理由なく取り消せるとすると、成立した契約から貸主だけが自由に外れる構造になり、借主の側から見て不均衡です。承諾の前に断る自由を置けば、取消しの条項は不要になります。
先払いの決済との前後関係も決めておきます。クレジットカードの決済や銀行振込の入金が済んだことと、契約が成立したことは、別のことです。決済が通らなかったときは契約を成立させない、入金が期限までにないときは申込みを失効させる、という流れを規約に書きます。承諾の前に受け取った金銭は、承諾しないときに返すのが前提です。
なお、画面の作り方にも注意が必要です。消費者が画面を通して申込みを行う電子消費者契約では、確認を求める画面を設けていないと、操作ミスによる申込みについて、重大な過失があっても錯誤による取消しを主張される余地があります(電子消費者契約に関する民法の特例に関する法律3条)。申込み内容を一覧にした確認画面を送信の前に出すことは、成立の時点を決めることと並んで、申込みの設計の基本です。詳しくは全体像のページに載せています。
本人確認と虚偽申告:目的に見合う方法を選び、取得の目的を示す
本人の確認をする目的は、主に三つです。貸した物が戻らなくなるのを防ぐこと、連絡が取れなくなるのを防ぐこと、未成年者の申込みかどうかを知ることです。確認の方法を重くするほど申込みの手間が増え、申込みを諦める人も出ます。貸出品の価格や、持ち去られたときの損失に見合う方法を選びます。
本人確認の方法の比較
| 方法 | 確かめられること | 弱い点 | 規約に書くこと |
|---|---|---|---|
| 連絡先の確認(メールの確認リンク、電話番号への確認コード) | 連絡が取れる状態であること。 | 本人かどうかは分からない。 | 確認が済むまで申込みを承諾しないこと。連絡先の変更の届出。 |
| クレジットカードの決済・認証 | カードの名義人が支払える状態にあること。 | カードの名義人が借主本人とは限らない(家族のカードの使用など)。 | カード名義と借主が異なるときの扱い。決済が通らなかったときは成立しないこと。 |
| 本人確認書類の提示 | 氏名、住所、生年月日(年齢)。 | 書類の画像の保管に責任が伴う。 | 取得する目的、保管する期間、期間経過後の消去。 |
| 受取時の本人確認(配送時に受取人を確認する方法) | 本人が受け取ったこと。 | 配送できる地域や費用に制約がある。不在・受取拒否が増える。 | 不在時の再配達の回数、保管期間が過ぎて返送されたときの費用の負担。 |
本人確認で取得する情報は、個人情報です。個人情報取扱事業者は、個人情報を取り扱うにあたって、利用の目的をできる限り特定しなければなりません(個人情報保護法17条1項)。契約の締結に伴って書面(電磁的記録を含む)に記載された本人の個人情報を取得するときは、あらかじめ本人に利用目的を明示する必要があります(同法21条2項)。申込み画面の入力欄の近くに、「申込みの受付、本人及び年齢の確認、レンタル品の発送、料金の請求、返却に関する連絡のために利用します」のように、目的を示しておきます。取得した個人データについては、漏えい、滅失、毀損の防止のために必要かつ適切な措置を講じることも求められます(同法23条)。確認書類の画像を取得するかどうか、取得するならいつまで保管するかの決め方は、返却品に残る個人情報とデータのページに載せています。
申込内容に虚偽があった場合の扱いも、書いておきます。承諾の前に分かったときは、承諾しなければ足ります。成立の後に分かったときは、貸出契約の解除の問題になります。契約を解除するには、相当の期間を定めて履行を催告するのが原則で(民法541条)、履行が不能であるときや、履行を拒絶する意思が明確なときなどは催告なしで解除できます(同法542条1項)。申込内容の虚偽は、これらの類型に当てはまるとは限らないため、規約に「申込みの際に重要な事項について虚偽の申告をしたとき」を解除の事由として書いておくと、貸主は解除の根拠を持てます。
書き方では、二つの点に注意します。一つ目は、範囲です。「申込内容に虚偽、記入漏れがあるとき」のように記入漏れまで含めると、軽微な誤記でも解除できる書き方になり、広すぎます。「重要な事項」に絞り、まず訂正の機会を与える手続を前に置くと、運用も安定します。二つ目は、解除のあとの金銭の扱いです。解除の事由を書くことと、支払い済みの料金を一切返金しないことは、別の問題です。解除したときは、レンタル品を直ちに返すこと、貸出の日数に応じた料金を精算することを書きます。「返金しない」をセットにする書き方の限界は、レンタルの中途解約と最低利用期間で取り上げます。
未成年者の申込み:同意がなければ取り消すことができる
成年年齢は、18歳です(民法4条)。したがって、取消しの問題になる「未成年者」は、17歳以下の人を指します。18歳、19歳の借主には、このあとの取消権は働きません。未成年者が法律行為をするには、法定代理人の同意を得なければならず、同意のない法律行為は取り消すことができます(5条1項・2項)。法定代理人は、通常は親権者です。取り消すことができるのは、未成年者本人、その法定代理人などです(120条1項)。取り消された行為は、初めから無効だったものとみなされます(121条)。
取消しがされたときの後始末にも特徴があります。無効な行為に基づいて給付を受けた者は、原則として、相手方を原状に復させる義務を負います(121条の2第1項)。ところが、行為の時に制限行為能力者であった者は、その行為によって現に利益を受けている限度で返還すれば足ります(同条3項)。レンタルに当てはめると、未成年者は、レンタル品そのものは返す必要がありますが、使った期間の料金や、壊したときの弁償を、全額請求できるとは限りません。貸主から見れば、未成年者の申込みを漫然と受けてしまうと、代金の回収に不安が残る、ということです。
法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その範囲で未成年者が自由に処分できます。目的を定めずに処分を許した財産も同様です(5条3項)。小遣いの範囲で払える少額の貸出であれば、この規定で有効になる場面も考えられます。ただし、月額の料金が続く貸し出し、保証金を預かる貸し出し、延滞料や弁償金を負う貸し出しが、小遣いの範囲だと言えるかは、個別の事情によります。貸主の側から、小遣いの範囲だと決めつけることはできません。
未成年者が成年だと偽ったときの扱いにも触れます。制限行為能力者が、行為能力者であることを信じさせるために詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができなくなります(21条)。ただし、どのような行為が詐術にあたるかは個別の事情で判断されます。年齢の確認欄に偽りの入力があったという事実だけで、いつも取消権が失われるとは限りません。詐術を当てにするより、年齢の確認と、親権者の同意の取得を設計するほうが確実です。
親権者の同意は、次のような手順で取ります。第一に、年齢の確認で、18歳未満の人を拾い出す。第二に、18歳未満の人には、親権者の同意が必要だと知らせ、親権者の氏名と、借主との続柄、連絡先を入力してもらう。第三に、貸出期間、料金、延滞料、弁償金など借主が負担する金銭の内容を親権者に示したうえで、同意を取る。第四に、同意の記録を、申込みと一緒に残す。同意は、申込みの画面で借主が「親の同意を得ました」にチェックするだけでは、親権者が確認した証拠になりません。親権者の連絡先に、別の経路(親権者のメールアドレス宛ての確認、電話)で確認するのが、確かな方法です。
同意をもらうことと、親権者が支払いの責任を負うことは、別です。法定代理人が同意しても、それだけで親権者が借主の債務を負うわけではありません。親権者に支払いの責任を負わせたいのであれば、親権者を貸出契約の当事者(借主)にして、未成年者を使う人として位置づける構成や、親権者との間で別に保証の契約を結ぶ構成になります。保証の契約は、書面(電磁的記録を含む)でしなければ効力を生じません(446条2項・3項)。実務では、貸出品が未成年者向けでない限り、18歳未満の申込みを受けない扱いにするほうが、運用は単純です。
規約例未成年者の申込み
- 未成年者(18歳未満の者をいう。以下同じ。)が申し込むときは、法定代理人(親権者を含む。以下同じ。)の同意を得なければならない。
- 貸主は、未成年者の申込みについて、法定代理人の氏名、連絡先及び同意の内容を、貸主が定める方法により確認する。貸主は、この確認が終わるまで、申込みを承諾しないことができる。
- 貸主は、法定代理人に同意を求めるときは、貸出期間、料金、延滞料、弁償金その他借主が負担する金銭の内容を、法定代理人に示す。
「未成年者は取消しをしないものとする」といった規約を置いても、民法5条2項による取消しを排除することはできません。同意の取得の手順を書くことが、現実的な対応です。
確認の問い申込みの設計について、確認しておく問い
貸出品は、18歳未満の人にも貸し出す想定ですか。
想定しないのであれば、「18歳未満の方は申し込めません」と明記し、年齢の確認欄を設けるだけで足ります。
親権者の同意は、借主の入力とは別の経路で確認できますか。
借主の自己申告だけでは、親権者が確認した証拠になりません。
本人確認の方法は、貸出品の価格や持ち去られたときの損失に見合っていますか。
方法が重すぎると申込みが減り、軽すぎると回収不能が増えます。
取得する情報の利用目的を、入力欄の近くに表示していますか。
個人情報保護法21条2項が、契約に伴い書面(電磁的記録を含む)で取得する個人情報の利用目的の明示を求めています。
申込内容に虚偽があったときの解除の事由を、「重要な事項」に絞って書いていますか。
記入漏れまで含む広い書き方は、軽微な誤記でも解除できる書き方になり、運用が不安定になります。
配送中の事故と配送の遅れ:引渡しの前は貸主の側の事情
貸主が借主に使わせる債務を果たしたといえるのは、レンタル品が借主に引き渡された時です。配送の途中でレンタル品が壊れたり、なくなったりしたときは、貸主は引渡しを終えていません。この段階での事故を借主に負担させるのは、借主が使えていない物の危険を負うことになり、筋が通りません。引渡しが不能になったときは、債権者(借主)は引渡しを請求できません(民法412条の2第1項)。貸主に責めに帰すべき事由があれば、損害賠償の問題になります(同法415条1項)。貸主の責めに帰することができない事由で債務を履行できなくなったときでも、借主は反対給付(賃料の支払)を拒むことができます(同法536条1項)。運送会社を選んで配送を任せたのが貸主であることを考えると、運送中の事故は、貸主の側の事情として整理するのが自然です。
配送が遅れたときの扱いは、貸出期間の数え方とつながっています。貸出期間を発送の日から数える定めにすると、配送が遅れた分だけ、借主が使える期間が短くなります。貸出期間は、レンタル品が借主に届いた日(引渡日)から数えるのが、借主に不利益を生じさせない書き方です。イベントや旅行の日に間に合わせる貸し出しでは、届く日を指定できる配送にするか、到着の遅れによって使えなかったときの料金の扱い(減額、返金)を決めておきます。
書き方の例(一般的な例) 配送の遅れの責任
配送の遅れによる損害の責任と、貸出期間の起算
理由一切の責任を負わないという書き方は、消費者契約法8条1項1号(事業者の債務不履行による損害賠償責任の全部を免除する条項)に触れるおそれがあります。免責の範囲を「責めに帰することができない事由」(民法415条1項ただし書)に合わせ、故意・重大な過失を除きます。貸出期間を引渡日から数えることで、遅れた分だけ使えない不利益も防げます。
責任の一部を免除するときにも、制限があります。事業者の債務不履行による損害賠償責任の一部を免除する条項は、事業者などの故意または重大な過失による場合を除いて、軽い過失(重大な過失を除く過失)にのみ適用されることを明らかにしていないときは、無効とされます(消費者契約法8条3項)。たとえば「配送の遅れによる損害は、貸出料金の額を上限とする」と書くのであれば、「貸主に故意又は重大な過失があるときを除く」を添えて、過失の範囲を明らかにしておくことが必要になります。
不在や受取拒否で届けられなかったときの扱いも、規約に書きます。再配達の回数、保管期間が過ぎて返送されたときの往復の送料、その場合に申込みをキャンセルして返金するのか、再発送するのかを決めておきます。借主が受け取らなかった事情が借主の側にあるときは、実費の範囲で送料を負担してもらう定めが考えられますが、金額を「貸主が定める額」と書かず、実費である旨を明記します。
返却するときの配送も同様です。返却用の送り状や梱包材を同梱するなら、その旨と、返却の事故をどの時点まで借主が負うのかを書きます。返却完了の基準日と、返送中の紛失・破損の扱いは、レンタルの延滞料の規約とレンタル品を壊した・なくしたときのページで説明します。追跡番号を記録しておくと、発送した日、届いた日を示す証拠になります。
到着時の外観確認と、初期不良の連絡期限
レンタル品が届いたときの状態を、借主と貸主が共有しておくことは、返却のときの検品に直結します。借主は、受け取った後に生じた損傷について、賃貸借が終了したときに原状に復する義務を負いますが、通常の使用及び収益によって生じた損耗と経年変化は除かれ、借主の責めに帰することができない事由による損傷も除かれます(民法621条)。つまり、「受け取った後に」何が生じたのかを示すには、受け取ったときの状態が基準になります。到着時の状態が記録されていなければ、返却時の傷が、借りる前からあったのか、借りている間に生じたのかを、双方とも説明できません。
そこで、規約と同梱物で、到着時の確認の手順を決めます。同梱の確認表で、外観、付属品の数量、動作の確認を借主に頼み、不備があれば、一定の日数以内に、写真を添えて連絡してもらう。貸主の側も、発送前の状態を撮影して残しておきます。民法も、賃借物が修繕を要するときは、賃借人は遅滞なくその旨を賃貸人に通知しなければならないと定めています(615条)。連絡の方法と期限を規約で具体的にするのは、この通知義務を使いやすい形にするものです。
貸主の側にも、民法上の義務があります。貸主は、使用及び収益に必要な修繕をする義務を負い(606条1項本文)、借りたものの一部が借主の責めに帰することができない事由で使えなくなったときは、賃料は使えなくなった部分の割合に応じて減額されます(611条1項)。届いたレンタル品に最初から不具合があるときは、交換、料金の減額または返金、契約の解除という対応を規約で選べるようにしておきます。交換できる在庫がないときは、料金を返金すると書いておくと、借主が待たされません。
規約例受取時の確認
- 借主は、レンタル品の到着後すみやかに開封し、同梱の確認表により、外観、付属品の数量及び動作を確認する。
- 前項の確認により、外観の傷、付属品の不足又は動作の不良を見つけたときは、借主は、レンタル品の到着日から○日以内に、貸主が定める方法により、状況を撮影した写真とともに貸主に連絡する。
- 貸主は、前項の連絡を受けたときは、レンタル品の交換、料金の減額若しくは返金又は貸出契約の解除のいずれかにより対応する。交換できる在庫がないときは、料金を返金する。
- 第2項の期間を過ぎた後に、借主がレンタル品の不具合を見つけたときは、借主は、すみやかに貸主に連絡する。この場合、貸主は、不具合の原因を確認のうえ、前項に準じて対応する。
第2項の期間は、外観や付属品のように、受取時に確認できる事項を対象にした期間です。使用中に生じた不具合の連絡は、第4項のように別の手続を置きます。○には、貸出品に応じた日数を入れます。
連絡の期限を置くときは、書き方に注意が必要です。「期限内に連絡がなければ、交換、返金の義務を負わない」という定めは、貸主の債務不履行の責任を免除する効果を持ち、消費者契約法8条1項1号や10条の問題になります。使い始めてから分かる不具合まで、一律に期限で封じてしまうからです。外観や付属品の不足のように受取時に確認できる事項には期限を置き、動作の不良のように使い始めて初めて分かる事項は、別の手続にするのが、両立する書き方です。
反対に、借主が不具合を申し出たのに、返却された物に不具合が確認できなかったときの費用の負担を定める規約もあります。点検費用や往復の送料を借主に負担させる書き方は、実費の範囲に限り、金額の計算方法を明記します。貸主が主張した不具合が「確認できない」ことの判断が貸主の一方的な判断にならないよう、点検の結果を借主に示す手続も添えます。
受取時の確認で起きがちな落とし穴
- 連絡期限が「到着当日のみ」など、現実的でないほど短い。
- 期限を過ぎたら、不具合があっても一切の対応をしないと定めている。
- 確認表の付属品の一覧が、実際の同梱物とずれている。
- 写真を添えるよう求めながら、撮影の仕方を案内していない。
- 返金の方法(振込手数料の負担、返金の時期)が書かれていない。
起きがちなこと:申込みから引渡しまでの場面
申込みから引渡しまでに起きがちなこと
場面申込完了のメールが届いたのに、在庫がなかった
起きがちなこと自動返信の「ご注文ありがとうございます」を、借主が承諾だと受け止め、契約の成立を前提に損害の賠償を求める。
規約で手当てすること受付の通知と申込完了通知を分け、成立の時点を申込完了通知の到達時にする。承諾しないときの通知と返金を書く。
場面配送したが、料金が払われず連絡が取れなくなった
起きがちなこと連絡先の確認がメールの入力だけで、本人かどうかも、支払う意思も確かめていなかった。
規約で手当てすること連絡先の確認、カードの決済の完了、本人確認書類の提示など、貸出品の価値に見合う方法を選び、承諾の前提にする。音信不通になったときの対応はレンタルでトラブルになったときで整理する。
場面親のカードで子どもが申し込んだ
起きがちなこと貸出後に、親権者から、同意していないので取り消すと言われる。借主の自己申告の年齢が成年になっていた。
規約で手当てすること年齢の確認を設計し、18歳未満には親権者の同意を別の経路で確認する。想定しないなら、申し込めない旨を明記する。
場面届くのが遅れ、使いたい日に間に合わなかった
起きがちなこと貸出期間が発送の日から数えられ、使える日数が減る。規約には「配送の遅れは一切責任を負わない」とある。
規約で手当てすること貸出期間を引渡日から数え、免責は「責めに帰することができない事由」の範囲に絞り、故意・重大な過失を除く。
場面返却したら、借りる前からあった傷を借主のせいにされた
起きがちなこと到着時の状態が記録されておらず、傷がいつ生じたのか、双方とも示せない。
規約で手当てすること同梱の確認表と、連絡期限、写真の送付の手順を決める。貸主も、発送前の状態を撮影して残す。
個別の取引への当てはめは、貸し出す物の種類や契約の内容によって異なります。
よくあるご質問
申込みを受け付けたメールを自動で送ったら、契約は成立しますか?
規約の定め方によって変わります。契約は、申込みに対する承諾が相手方に到達した時に成立します(民法522条1項、97条1項)。自動返信が「受け付けました」という趣旨の通知にとどまり、承諾の意思が読み取れなければ、成立とは言えない場合があります。ただし、曖昧なままにしておくと争いになるため、規約に、受付の通知は成立を意味せず、貸主の申込完了通知が借主に到達した時に成立すると、はっきり書いておきます。
本人確認書類の画像を保管してよいですか?
取得して保管すること自体は可能ですが、利用の目的をできる限り特定し(個人情報保護法17条1項)、契約に伴って書面(電磁的記録を含む)で取得するときは、あらかじめ利用目的を本人に明示する必要があります(同法21条2項)。取得した画像は個人データとして、安全管理のための措置を講じる必要があり(同法23条)、利用する必要がなくなったときは、遅滞なく消去するよう努めることも求められています(同法22条)。目的に必要な最小限の項目に絞り、保管の期間を決めておくのが基本です。
未成年者が申し込んだ場合、あとから取り消されますか?
18歳未満の人が、法定代理人(通常は親権者)の同意なしに申し込んだときは、取り消すことができます(民法5条1項・2項)。取り消されると行為は初めから無効だったものとみなされ(同法121条)、行為の時に制限行為能力者であった借主は、現に利益を受けている限度で返還すれば足ります(同法121条の2第3項)。18歳、19歳は成年なので、この取消権は働きません(同法4条)。取消しを避けるには、18歳未満の申込みを受けないか、親権者の同意を別の経路で確認します。
配送中にレンタル品が壊れたら、誰の負担になりますか?
借主に引き渡す前の事故なので、貸主の側の事情として整理するのが自然です。引渡しが不能になれば、借主は引渡しを請求できません(民法412条の2第1項)。貸主に責めに帰すべき事由があれば損害賠償の問題になり(同法415条1項)、責めに帰すべき事由がなくても、借主は賃料の支払を拒めます(同法536条1項)。規約でこれを借主の負担とする書き方は、消費者契約法10条の問題になり得ます。
到着時の不具合の連絡期限を過ぎたら、貸主は一切対応しなくてよいですか?
一律にそう書くことには注意が必要です。貸主は使用・収益に必要な修繕をする義務を負い(民法606条1項)、期限後の対応を一切拒む定めは、貸主の債務不履行責任を免除する効果を持ち、消費者契約法8条1項1号や10条の問題になります。外観の傷や付属品の不足のように受取時に確認できる事項には期限を置き、使い始めて分かる動作の不良などは、別の連絡手続を定めておく形が、書き方として整います。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、貸し出す物の種類、契約の内容、借りる方が消費者か事業者かによって異なることがあります。条文は e-Gov法令検索(法令API)で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 消費者庁 / 国民生活センター / 個人情報保護委員会