このページの要点
- 返却完了の基準日(発送日か到着日か)と、期間の数え方(民法140条〜142条)、返送中の事故の責任を、規約で一つに決める。
- 延長は貸主の承諾の通知が届いた時に成立する形にする。放置すると、使用の継続を知りながら異議を述べない貸主について更新が推定される(民法619条1項)。
- 延滞料は、使用料相当額か賠償額の予定かで説明の仕方が変わる(民法420条)。日割にして上限を置き、請求時に内訳を示す。借主が消費者のときは、9条1号・2号の対象かを見分け、残りは10条で見る。
- 連絡のない延滞を購入の申込みとみなす条項は、消費者契約法10条が例に挙げる類型。催告・解除・損害賠償の順で請求する手順に改める(民法541条、415条2項3号、422条)。
結論:返却の遅れと料金の支払いの遅れを分け、延滞料の上限は条文の数字でなく性質から考える
物を貸す側を「貸主」、借りる側を「借主」、貸し出す物を「レンタル品」と呼びます。借主がレンタル品を返却期限までに返さないとき、貸主は延滞料を請求したいと考えます。借主の側からは、請求された延滞料が高すぎるように見えます。この食い違いの多くは、返却の期限と、延滞の数え方、延滞料の性質が、規約に書かれていないことから起きています。
最初に押さえておきたいのは、「延滞料の上限」を直接定めた条文はない、ということです。民法にも、消費者契約法にも、返却の遅れに対する延滞料を「いくらまで」と定めた規定はありません。借主が消費者の場合に出てくる「年14.6%」は、金銭の支払いが遅れたときの損害賠償の額の予定・違約金についての基準で(消費者契約法9条2号)、物の返却が遅れたときの延滞料に、そのままは当てはまりません。返却の遅れの延滞料は、その金額が使用料の相当額にあたるのか、損害賠償額の予定にあたるのかという性質と、消費者契約法10条などの考え方から見ていきます。
このページでは、次の順に説明します。返却完了の基準日と期限の数え方、延長の手続、延滞料の性質と計算方法、消費者契約法の条文の使い分け、連絡のない延滞への対応です。全体の地図は個人向けレンタルの規約・契約書の全体像に載せています。
返却完了の基準日と、期限の数え方
延滞は、返却期限を過ぎた時に始まります。債務の履行について確定期限があるときは、債務者はその期限が到来した時から遅滞の責任を負います(民法412条1項)。返却期限を「貸出期間の満了日」と決めていれば、確定期限です。ここで揉めるのは、「返却した」と言える日が、いつなのかという点です。借主は、期限の日に宅配便の営業所に持ち込んだのだから返却した、と考えます。貸主は、レンタル品が手元に届くまでは返却されていない、と考えます。
基準日の定め方は、大きく二つあります。発送した日(集荷の受付日、営業所への持込み日)を返却の日とする方法と、貸主に到着した日を返却の日とする方法です。どちらが正しいということはなく、貸出品の性質と、次の貸出までの余裕で選びます。大事なのは、どちらかを規約に書いておくこと、そして、返送の途中で生じた紛失・破損の責任をどちらが負うのかを、別に書いておくことです。
返却完了の基準日の比較
| 基準日 | 借主にとって | 貸主にとって | 向く貸出 |
|---|---|---|---|
| 発送日(集荷の受付日、営業所への持込み日) | 到着までの日数に左右されない。期限の管理がしやすい。 | 到着が遅れる分、次の貸出に影響する。返送中の事故の危険の負担を別に定める必要がある。 | 次の貸出まで余裕のある貸出。個人の趣味での利用が中心の貸出。 |
| 到着日(貸主にレンタル品が届いた日) | 配送の日数を見込んで、早めに発送する必要がある。遅配の危険を借主が負う形になる。 | 次の貸出の計画が立てやすい。 | 次の予約が詰まっている貸出。日付が重要なイベント用の貸出。 |
| 検品完了日(貸主が検品を終えた日) | 日付を借主が知りようがなく、貸主の作業日程に左右される。 | 作業の都合に合わせて日を決められる。 | 期限の基準としては避ける。検品の結果の通知期限として別に定める。 |
期限の数え方も書いておきます。日、週、月または年で期間を定めたときは、期間の初日は算入しません(民法140条本文)。期間は、その末日の終了をもって満了します(141条)。期間の末日が日曜日、国民の祝日その他の休日にあたるときは、その日に取引をしない慣習がある場合に限り、期間はその翌日に満了します(142条)。「受取日から○日間」と書いても、受取日を数えるのかどうか、末日が休日のときはどうなるのかは、読み手によって解釈が分かれます。受取日を第1日として数えるのか、翌日から数えるのか、末日が貸主の休業日にあたるときはどうなるのかを、規約に明記します。
規約例貸出期間と返却
- 貸出期間は、引渡日(レンタル品が借主に到着した日をいう。以下同じ。)を第1日として数え、○日目の終了をもって満了する。
- 借主は、貸出期間が満了する日(以下「返却期限」という。)までに、貸主が指定する方法により、レンタル品を返却する。返却期限が貸主の休業日にあたるときは、返却期限は、翌営業日とする。
- 借主が返却期限までに、貸主が指定する配送業者にレンタル品を引き渡し、送り状の控え又は追跡番号によってその日が確認できたときは、期限内に返却したものとして取り扱う。ただし、レンタル品が貸主に到着するまでの間に生じた紛失及び損傷の責任は、第○条による。
- 前項の確認ができないとき、又は借主が貸主の指定しない方法で返却したときは、レンタル品が貸主に到着した日を返却した日とする。
第3項は、発送日を返却の日とする設計の例です。到着日を基準にするなら、第3項を「返却は、レンタル品が貸主に到着した時に完了する」と書き替え、借主に配送の日数を見込んだ発送を求めます。
貸出期間の始まりを、引渡日(到着した日)に置いていることにも意味があります。発送の日から数える定めにすると、配送が遅れた分だけ借主の使える期間が短くなり、返却期限も早く来ます。この点はレンタルの申込みから引渡しまでで説明しています。
延長の手続:承諾の通知が届くまで延長は成立しない形にする
借主が貸出期間を延ばしたいと考えたとき、延長は、貸出期間を延ばす新たな合意にあたります。延長を申し込んだだけで延長が成立するのか、貸主の承諾が要るのかを、規約で決めておかないと、「延長を申し込んだのに、返事がないまま期限が来た」「延長したつもりで使い続けた」という争いになります。
規約には、延長に関する五つの事項を書きます。申込みの期限(返却期限の何日前まで、あるいは返却期限の当日の営業時間内まで)、申込みの方法、承諾の可否を決める基準(次の予約が入っていないか、在庫の状況)、延長の料金(金額の書き方はレンタルの料金・日割・延長・送料の表示で説明します)、延長できる回数と通算の日数の上限です。貸主が承諾するかどうかを、返却期限より前に通知する期限も定めておくと、借主が回答を待つ間に期限が過ぎることを避けられます。
延長の承諾がないまま、借主が使い続けたときの扱いも、重要です。民法は、賃貸借の期間が満了した後、賃借人が賃借物の使用または収益を継続する場合に、賃貸人がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の賃貸借と同一の条件で更に賃貸借をしたものと推定すると定めています(619条1項前段)。延滞を放置していると、延滞ではなく、通常の条件での更新と推定されて、延滞料の請求の根拠が弱くなることがあります。この規定は推定にとどまるため、規約に「貸主が異議を述べなかったときも、延長の承諾の通知がない限り、延長されたものとはみなさない」と書いておくと、延滞の間は延滞料の対象になることが明らかになります。
規約例延長
- 借主は、返却期限の○日前までに、貸主が定める方法により、貸出期間の延長を申し込むことができる。
- 貸主は、次の貸出の予約の状況その他の事情を確認のうえ、延長を承諾するかを決め、返却期限の前までに借主に通知する。延長は、貸主の承諾の通知が借主に到達した時に成立する。
- 貸主が延長を承諾しないときは、返却期限は変更されない。貸主が異議を述べなかったときも、承諾の通知がない限り、延長されたものとはみなさない。
- 延長の料金は、延長する日数に応じて、第○条の料金表により計算する。延長は、○回、通算○日を限度とする。
月ごとに自動で更新される月額制の貸し出しは、ここでの「延長」とは仕組みが異なります。更新の仕組みと、更新を止めたいときの解約の手続は、レンタルの中途解約と最低利用期間で扱います。
延滞料の性質:使用料相当額か、損害賠償額の予定か
返却期限を過ぎて借主がレンタル品を持ち続けるのは、返還する債務の履行が遅れている状態です。債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求できます(民法415条1項)。貸主に生じる損害は、延滞の間レンタル品を貸し出せないことによる逸失利益、借主への連絡や再度の発送に要する費用などです。ただし、これらを一件ずつ立証するのは手間がかかります。そこで、規約に延滞料を定めておくことになります。
延滞料には、二つの性質があり得ます。一つは、延滞の間の使用料にあたるもの。期間を延ばした場合の日額料金と同じ額を、延滞の日数分だけ請求するものです。もう一つは、債務不履行による損害賠償の額をあらかじめ決めておく、賠償額の予定です。当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができ(420条1項)、違約金は賠償額の予定と推定されます(同条3項)。規約に「延滞料」「違約金」という名前で定めた金額が、この賠償額の予定にあたる、ということです。賠償額の予定にしておけば、貸主は、実際の損害の額を立証しなくても、定めた額を請求できます。
どちらの性質で書くかによって、金額の水準の考え方が変わります。使用料の相当額であれば、通常の日額料金と同額、または延長料金と同額が、説明のしやすい水準です。賠償額の予定にして、通常の日額料金に所定の倍率を乗じた額とするのであれば、その上乗せが、延滞によって貸主に生じる損害(次の貸出の機会の喪失、連絡や再発送の費用など)を反映したものだと、説明できなければなりません。倍率を高くするほど、過大だと評価されやすくなります。
延滞料の計算に上限を置くことも、検討します。延滞が長引くと、延滞料の合計がレンタル品の購入価額を超えることがあります。貸主に生じる損害が、物の価額を大きく超えて増え続けるとは考えにくく、このような設計は、損害賠償として均衡を欠くと評価されるおそれがあります。延滞料の合計額に、レンタル品の購入価額を上限として設けておくと、借主にとっても見通しが立ちます。上限に達しても返却されないときは、次の項で述べる、損害賠償の段階に移ります。
延滞料の請求明細の例
- 延滞日数○日返却期限の翌日から、返却完了の基準日(第○条)まで。
- 延滞料の日額○円通常の日額料金と同額、または所定の倍率を乗じた額。
- 追加の送料・連絡費○円再発送や督促に要した実費。内訳を示せる範囲に限る。
- 上限の確認○円レンタル品の購入価額相当額を上限とする。
請求する延滞料の合計○円
借主から求められたときに、この明細を示せる状態にしておきます。
書き方の例(一般的な例) 延滞料の書き方
延滞料の計算単位と上限
理由月単位の定めでは、数日の遅れでも1か月分になり、均衡を欠きます。日割にし、上限と明細の提示を書くと、金額の根拠が借主にも見えます。
消費者契約法9条の見方:返却の遅れは、「解除」にも「支払いの遅れ」にも直接は当てはまらないことが多い
借主が事業として借りる人であれば、消費者契約法は適用されません。延滞料は、民法の賠償額の予定(420条)の範囲で有効に定められ、著しく過大なときに公序良俗(90条)が問題になります。借主が消費者の場合は、消費者契約法の条文が関係します。
同法9条は、二つの場面を定めています。1号は、消費者契約の解除に伴う損害賠償の額の予定・違約金のうち、同種の契約の解除に伴い事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える部分を、無効とします。2号は、消費者が支払うべき金銭を支払期日までに支払わない場合の損害賠償の額の予定・違約金のうち、支払期日の翌日からその支払をする日までの期間について、支払うべき額に年14.6%を乗じた額を超える部分を、無効とします。
これを延滞料にあてはめると、場面ごとに整理が必要です。料金の支払いが遅れたときの遅延損害金は、2号の対象で、年14.6%を超える部分が無効になります。契約を解除して違約金を請求する条項は、1号の対象で、平均的な損害の額が基準になります。他方、貸出期間が満了したのに借主が返却しない、という返却の遅れそのものに対する延滞料は、契約の「解除に伴う」ものでも、「金銭の支払いの遅れ」についてのものでもありません。この場合に9条の数字が直接当てはまるとは限らず、残る受け皿は、同法10条です。10条は、民法などの任意規定の適用による場合に比べて、消費者の権利を制限し、または義務を加重する条項で、信義誠実の原則(民法1条2項)に反して消費者の利益を一方的に害するものを、無効とします。延滞料が、貸主に生じる損害から見て明らかに過大なときは、10条の問題になります。いくらから過大になるのかは、条項ごと、貸出品ごとの判断になります。
延滞に関する金銭の種類と、借主が消費者のときの条文
| 金銭の種類 | 内容 | 見る条文 |
|---|---|---|
| 返却の遅れの延滞料 | 貸出期間の満了後も返却しないことへの、使用料相当額や賠償額の予定。 | 民法420条(賠償額の予定)、消費者契約法10条。9条の数字は直接は当てはまらないことが多い。 |
| 解除に伴う違約金 | 返却の遅れ等を理由に貸主が契約を解除し、違約金を請求する場合。 | 消費者契約法9条1号(平均的な損害を超える部分は無効)、10条。 |
| 料金の支払いが遅れたときの遅延損害金 | 貸出料金、延長料金の支払期日を過ぎた場合の遅延分。 | 消費者契約法9条2号(年14.6%を超える部分は無効)。約定がなければ法定利率(民法404条・419条1項)。 |
| 連絡のない延滞を購入扱いにする条項 | 一定の期間、連絡がないときに、購入の申込みがあったとみなす条項。 | 消費者契約法10条(不作為による意思表示のみなし)。次の項で説明します。 |
事業者には、解除に伴う違約金を請求する場合に、消費者から求められたときは、算定の根拠の概要を説明する努力義務もあります(消費者契約法9条2項)。違約金を定める以上、その金額がどのような損害を見込んだものか、貸主の側で説明できるようにしておくことが、規約づくりの前提になります。
確認の問い延滞料の規約について、確認しておく問い
返却完了の基準日は、発送した日ですか、到着した日ですか。返送中の事故の責任は、どちらが負いますか。
基準日と事故の責任は別の論点です。片方だけを書くと、「期限内に発送したのに、延滞料を請求された」という争いになります。
延長は、貸主の承諾の通知が届いた時に成立する形になっていますか。
承諾の前に使い続けたとき、民法619条1項の推定で更新とみなされる余地を残さないためです。
延滞料は、使用料相当額ですか、賠償額の予定ですか。
性質によって、金額の説明の仕方が変わります。賠償額の予定なら、上乗せの根拠を説明できる必要があります。
延滞料の計算は、日割ですか。合計額に上限がありますか。
月単位の計算や、上限のない計算は、過大と評価されやすい書き方です。
料金の支払いが遅れたときの遅延損害金は、延滞料と別の条にしていますか。
消費者契約法9条2号の年14.6%の基準が当てはまるのは、金銭の支払いの遅れだけです。
連絡のない延滞:購入扱いへの切替えの限界と、段階を踏んだ対応
延滞の中でも、貸主が最も困るのは、連絡がないまま返却期限を過ぎ、返却されないケースです。そこで、規約に、「返却期限を過ぎて一定の日数連絡がないときは、借主がレンタル品の購入を申し込んだものとみなし、購入代金を請求する」という条項を置くことがあります。貸主にとっては、物が戻らないときの代金を確保する手段に見えます。
この条項には、大きな問題があります。契約は、申込みと承諾の合致で成立するのが原則です(民法522条1項)。借主が何も言わないこと(不作為)を、購入の申込みとみなす条項は、契約の成立の原則から外れます。消費者契約法10条は、まさにこの形を例として挙げています。「消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項」その他、消費者の権利を制限し、または義務を加重する条項で、民法1条2項の基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効だと定めています。条文が名指しで挙げている類型ですから、購入扱いの条項は、審査を厳しく受けるものとして扱うのが無難です。
それでも、物が戻らないときに貸主が代金相当の補填を受けたいという要請は、正当なものです。この要請は、「購入したものとみなす」のではなく、債務不履行による損害賠償として組み立てます。借主が返還の債務を履行しないときに、貸主は、相当の期間を定めて催告し(民法541条)、その期間内に返却がなければ契約を解除できます。契約が解除されたとき、または解除権が発生したときは、債務の履行に代わる損害賠償を請求できます(415条2項3号)。この賠償の額は、レンタル品の価額を基準に算定します。貸主が、損害賠償として、その物の価額の全部の支払を受けたときは、借主は、その物について貸主の権利を当然に取得します(422条)。購入したとみなすのと、結果の一部は似ていますが、催告と解除の手続を踏み、請求の根拠が損害賠償であることが明確になる点が違います。賠償額の算定は、レンタル品を壊した・なくしたときで説明します。
連絡のない延滞への対応の流れ
- 返却期限の到来期限を過ぎた日から、延滞料の計算を始める
- 連絡登録されたメール、電話、書面のうち、複数の手段で連絡する。記録を残す
- 催告相当の期間を定めて返却を求める(民法541条)
- 解除期間内に返却がなければ、契約を解除する旨を通知する
- 損害賠償の請求レンタル品の価額を基準に算定。内訳を示して請求する
- 返却されたとき返却後の状態に応じて、請求の取下げや精算を行う
連絡の記録(日時、手段、内容)が、あとの手続の土台になります。
通知が届かない場合に備えて、規約には、住所や連絡先の変更を遅滞なく届け出る義務と、登録された連絡先にあてた通知が、通常到達すべき時に到達したものとみなす定めを置くことがあります。民法も、相手方が正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、その通知は通常到達すべきであった時に到達したものとみなすと定めています(97条2項)。ただし、届出義務を怠ったという理由だけで、どのような通知でも到達したものとみなす定めは、内容によっては審査を受けます。
書き方の例(一般的な例) 連絡のない延滞の条項
購入扱いの条項
理由沈黙を新たな契約の申込みとみなす条項は、消費者契約法10条が例に挙げる類型です。催告・解除・損害賠償という民法の手順に沿った書き方にすると、請求の根拠が明確になります。
なお、お試しで借りて気に入ったので購入する、という流れは別の話です。借主が自分の意思で購入を申し込み、貸主が承諾して売買が成立するのであれば、問題はありません。購入の申込みの方法、レンタル料の購入代金への充当、購入前にレンタル品を壊した場合の扱いは、規約に分けて書いておきます。
起きがちなこと:延滞料をめぐる場面
延滞料で起きがちなこと
場面期限内に発送したのに延滞料を請求された
起きがちなこと規約が「期限までに返却」としか書かず、発送の日か到着の日かが決まっていない。借主は営業所の控えを示し、貸主は到着日を基準にする。
規約で手当てすること返却完了の基準日を一つに決め、発送日基準なら返送中の事故の責任の負担も書く。追跡番号を記録に残す。
場面延長を申し込んだが、返事がないまま期限が来た
起きがちなこと延長の申込みと承諾の関係が決まっておらず、借主は延長されたつもりで使い続け、貸主は延滞と考える。
規約で手当てすること延長は承諾の通知が届いた時に成立すること、異議を述べなくても延長とみなさないことを書く。承諾の可否を通知する期限も決める。
場面数日の遅れなのに、1か月分の延滞料を請求された
起きがちなこと延滞料が月単位で定められ、日割がない。借主は金額に納得できず、貸主は規約どおりだと考える。
規約で手当てすること日割にし、合計額に上限を置き、請求のときに日数と計算の内訳を示す。
場面連絡のないまま長期間が過ぎ、購入代金を請求したい
起きがちなこと「連絡がなければ購入したものとみなす」の条項に頼ろうとするが、借主は応じず、条項の有効性が問題になる。
規約で手当てすること催告、解除、損害賠償の手順を規約に書き、連絡の記録を残す。購入のみなしには頼らない。
場面「年14.6%まで」と思い込んで延滞料を定めた
起きがちなこと返却の遅れの延滞料を、年14.6%以内と書いたが、貸主に生じる損害をまかなえない。反対に、その数字を超えても許されると考え、過大な額を定めた。
規約で手当てすること年14.6%は金銭の支払いの遅れの基準。返却の遅れの延滞料は、性質と合理的な水準を説明できる形で定める。
個別の取引への当てはめは、貸し出す物の種類や契約の内容によって異なります。
よくあるご質問
レンタルの延滞料に、法律上の上限はありますか?
返却の遅れに対する延滞料の上限を、直接定めた条文はありません。民法では、損害賠償の額を予定でき(420条1項)、違約金は賠償額の予定と推定されます(同条3項)。借主が消費者の場合は、消費者契約法10条により、金額が過大で消費者の利益を一方的に害する条項は無効になり得ます。いくらから過大かは、貸出品の性質や、貸主に生じる損害の見込みから、個別に判断されます。
返却は、発送した日と到着した日のどちらで数えるべきですか?
法律が決めているわけではなく、規約で決めます。発送日を基準にすると借主は到着までの日数に左右されず、到着日を基準にすると貸主は次の貸出の計画を立てやすくなります。どちらにする場合も、返送中の紛失・破損の責任を誰が負うかを、あわせて書いておく必要があります。検品が完了した日を基準にするのは、借主が日付を知りようがないため、避けます。
延長を申し込めば、自動的に延長されますか?
規約で決めたとおりになります。貸主の承諾の通知が届いた時に延長が成立すると決めていれば、承諾の前は延長されていません。民法619条1項は、期間の満了後も借主が使い続けているのを貸主が知りながら異議を述べないときは、従前と同じ条件で賃貸借をしたものと推定すると定めています。規約に、承諾の通知がない限り延長されたものとはみなさないと書いておけば、この推定への備えになります。
連絡なく延滞した人に、レンタル品を購入したものとみなして代金を請求できますか?
そのような書き方には、慎重さが必要です。借主が消費者の場合、消費者契約法10条は、消費者の不作為をもって新たな消費者契約の申込みまたは承諾の意思表示をしたものとみなす条項を例に挙げ、信義誠実の原則に反して消費者の利益を一方的に害するものを無効としています。催告、解除、損害賠償という順序で、請求の根拠を整える書き方が、より安定します。
延滞料の「年14.6%」は、返却の遅れにも当てはまりますか?
当てはまるとは限りません。年14.6%は、消費者が支払うべき金銭を支払期日までに支払わない場合の損害賠償の額の予定・違約金についての基準です(消費者契約法9条2号)。料金の支払いが遅れたときの遅延損害金には働きますが、レンタル品の返却が遅れたときの延滞料には、条文の文言上はそのままでは当てはまりません。返却の遅れの延滞料は、同法10条などの考え方で見ることになります。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、貸し出す物の種類、契約の内容、借りる方が消費者か事業者かによって異なることがあります。条文は e-Gov法令検索(法令API)で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 消費者庁 / 国民生活センター / 個人情報保護委員会