このページの要点
- 有償で物を使わせるのは賃貸借(民法601条)、無償は使用貸借(同法593条)。「サブスク」は法律上の型ではなく、月額で更新していく賃貸借の払い方である。
- 画面で申込みを受ける規約は定型約款にあたる。契約の内容とする旨の合意か、あらかじめの表示が必要で(民法548条の2第1項)、変更は548条の4の要件と周知が前提になる。
- 借主が個人でも、事業のために借りるなら消費者契約法は適用されない(同法2条1項)。消費者に適用される規制に合わせて一本の規約を作れば、どちらの借主にも通用する。
- 画面の同意は、規約の版、同意の操作、申込完了の通知を記録し、確認画面を設ける(電子消費者契約法3条)。保存の期間は、債権の時効(民法166条1項)と個人情報の消去の努力義務(個人情報保護法22条)から決める。
結論:貸す契約の型を決め、規約を契約の内容にし、借主の立場で法令を分ける
個人に物を貸し出す事業を始めるとき、最初に決めることは三つあります。一つ目は、その貸し出しがどの種類の契約なのか(有償なら賃貸借、無償なら使用貸借)。二つ目は、申込みの画面で規約に同意してもらう形で足りるのか、一件ずつ契約書を取り交わすのか。三つ目は、借りる人が事業と関係のない個人(消費者)なのか、事業のために借りる人なのか。この三つで、当てはまる条文と、書いてよい条項の幅が変わります。
このガイドでは、物を貸す側を「貸主」、借りる側を「借主」、貸し出す物を「レンタル品」と呼びます。「消費者」「事業者」は消費者契約法の用語で、貸主が事業として貸し出し、借主が事業と関係なく借りる個人であれば、その契約は消費者契約にあたります(同法2条1項・3項)。
規約や契約書に書き込む内容の大半は、次の場面の取り決めに集まります。各論は、それぞれのページで条文例と一緒に説明します。このページは、各論に入る前の全体の地図です。
- 申込みの成立、本人確認、未成年者、配送と初期不良:レンタルの申込みから引渡しまで
- 返却の遅れと延長、延滞料:レンタルの延滞料の規約
- 壊れた、なくなった、傷がある:レンタル品を壊した・なくしたとき
- 預かる保証金の返還と控除:レンタルの保証金・デポジット
- 月額制の途中でやめたい:レンタルの中途解約と最低利用期間
- 料金の内訳と表示:レンタルの料金・日割・延長・送料の表示
貸す契約の型:賃貸借、使用貸借、そして「サブスク」と呼ばれる貸し出し
貸す契約には、民法に二つの基本形があります。有償で物を使わせるのが賃貸借(民法601条)、無償で使わせるのが使用貸借(同法593条)です。賃貸借は、貸主が物の使用と収益を借主にさせることを約し、借主が賃料を払うことと、引渡しを受けた物を契約の終了時に返すことを約して成り立ちます。使用貸借は、貸主が物を引き渡すことを約し、借主が受け取った物を無償で使い、終了時に返すことを約して成り立ちます。違いは賃料の有無だけに見えますが、その先の取り扱いが変わります。
賃貸借では、貸主は使用と収益に必要な修繕をする義務を負います(606条1項本文)。ただし、借主の責めに帰すべき事由で修繕が必要になったときは、この義務はありません(同項ただし書)。使用貸借では、借主が借用物の通常の必要費を負担します(595条1項)。使用貸借の貸主の引渡義務も、贈与者の引渡義務と同様に、貸す物として特定した時の状態で引き渡すことを約したものと推定されます(596条・551条1項)。有償の貸し出しと無償の貸し借りとでは、貸主の責任の重さが違うということです。無償の貸し借りは、友人・知人への貸し出しを中心に友人・知人に物を貸す契約書で扱います。
月額の料金で借りる形の貸し出しは、近ごろ「サブスクリプション」と呼ばれます。これは法律上の契約の型の名前ではなく、料金の払い方と更新の仕組みを指す呼び方です。物を借りて料金を払い、終わったら返すという中身は賃貸借で、期間を月単位で区切って更新していく形になります。したがって、月額制でも、返却、破損、保証金、中途解約といった論点は、賃貸借のものがそのまま当てはまります。月額制に特有の最低利用期間や解約手数料はレンタルの中途解約と最低利用期間で扱います。
物の使用に加えて、交換、保守、配送、使い方の案内などの役務が料金に含まれているときは、賃貸借に役務の約束が組み合わさった契約と整理されます。その場合は、役務の内容と、貸出品が使えなかったときの料金の扱いを、規約に分けて書いておくと争いが減ります。
貸す契約の型の比較
| 型 | 対価 | 貸主の主な義務 | 借主の主な義務 |
|---|---|---|---|
| 賃貸借(有償のレンタル) | 賃料を払う | 使用・収益をさせる。必要な修繕をする(606条)。 | 賃料を払う。用法を守る(616条・594条1項)。終了時に返還し、受け取った後の損傷を原状に戻す(601条・621条)。 |
| 使用貸借(無償の貸し借り) | なし | 物を引き渡す(593条)。受け取る前は、書面によらない場合に限り貸主から解除できる(593条の2)。 | 用法を守る。通常の必要費を負担する(595条)。終了時に返還し、損傷を原状に戻す(599条3項)。 |
| 月額制のレンタル(サブスク型) | 月額料金を払う | 賃貸借と同じ。更新の仕組み、最低利用期間、解約の方法を規約で定める。 | 賃貸借と同じ。解約は規約の手続に従う。 |
| お試し貸出から購入へ | 貸出中は賃料、購入時は代金を払う | 貸出は賃貸借、購入は売買と、別の合意として扱う。 | 購入するかどうかを選ぶ。購入時のレンタル料の扱いは規約で定める。 |
お試しで借りて、気に入ったら購入できるという仕組みでは、貸出期間は賃貸借、購入は売買と、別の合意が連続します。購入に切り替えたときにレンタル料をどう扱うか(購入代金に充てるか、充てないか)、購入する前に壊したときの扱いは、購入の申込み方法とあわせて規約に書きます。購入するかどうかは、借主が選ぶ形にしておくのが基本です。借主が何も言わないことを理由に購入を成立させる書き方の限界は、レンタルの延滞料の規約で説明します。
契約の型は、名前ではなく中身で決まります。規約の表題が「サービス利用規約」でも、実質が有償で物を使わせて返してもらう内容なら、賃貸借の規定が当てはまります。反対に、「貸与」「レンタル」「リース」「ご利用」という呼び方が一つの規約に混ざっていると、貸すのか売るのか、どの時点で何を返すのかが読み取りにくくなります。リース(利用者が選んだ物を長期間使わせ、中途解約を制限する取引)や事業者どうしの機器レンタルは、このガイドの範囲外で、別のガイドで扱います。
書き方の例(一般的な例) 貸す契約の骨格を一文で書く
契約の型と目的物の特定
理由「ご利用」「商品」だけでは、賃貸借なのか売買なのか、返す物なのかが読み取れません。有償で貸す、特定した物を借りる、終了時に返す、の三点(民法601条)を一文に入れておくと、各条の根拠がそろいます。
規約で申込みを受ける:定型約款として契約の内容にする条件
ウェブの申込みでは、利用者ごとに条文を交渉せず、同じ規約を示して契約してもらうのが一般的です。民法は、このような規約を「定型約款」と呼んでいます。定型約款とは、定型取引(ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引で、内容の全部又は一部が画一的であることが双方にとって合理的なもの)において、契約の内容とすることを目的として、その特定の者があらかじめ準備した条項の総体です(民法548条の2第1項)。画面で申し込む個人向けのレンタルは、通常、これにあたると考えられます。
定型約款の個別の条項が契約の内容になる条件は、二つあります。一つは、定型取引を行う合意をした者が、定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき。もう一つは、定型約款を準備した者が、あらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたときです(同項1号・2号)。申込みボタンの近くに「利用規約を契約の内容とすることに同意のうえで申し込む」と表示し、規約の全文を開けるリンクと、同意の欄を置く画面は、この二つの条件に沿った作りです。借主が規約の全条項を読んでいなくても、条件を満たせば、個別の条項も合意したものとみなされます。
ただし、例外があります。相手方の権利を制限し、または義務を加重する条項で、定型取引の態様、その実情、取引上の社会通念に照らして、信義誠実の原則(民法1条2項)に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものは、合意しなかったものとみなされます(548条の2第2項)。規約に書いてあれば何でも契約の内容になる、というわけではありません。弁償の金額の算定を貸主に白紙で委ねる条項が問題になる場面は、レンタル品を壊した・なくしたときで取り上げます。
規約の内容を示す義務もあります。定型約款を準備した者は、定型取引の合意の前、または合意の後の相当の期間内に相手方から請求があったときは、遅滞なく、相当な方法でその内容を示さなければなりません。ただし、すでに規約を記載した書面を交付し、または規約を記録した電磁的記録を提供していたときは、この限りではありません(548条の3第1項)。合意の前に請求を拒んだときは、548条の2の合意のみなしは働きません(548条の3第2項。一時的な通信障害など正当な事由がある場合を除く)。規約の全文をウェブ上でいつでも見られ、保存できる状態にしておくことが、この請求への最も確実な備えです。消費者契約法も、貸主が規約の内容を容易に知り得る状態に置く措置を講じていないときは、消費者が内容の表示を請求するために必要な情報を提供するよう努めることを求めています(同法3条1項3号)。
規約の変更にも条件があります。変更が借主の一般の利益に適合するとき、または、契約をした目的に反せず、変更の必要性、変更後の内容の相当性、規約の変更をすることがある旨の定めの有無とその内容などに照らして合理的なときに限り、個別に合意を取らずに変更できます(548条の4第1項)。変更するときは、効力発生時期を定めて、変更する旨、変更後の内容、効力発生時期をインターネットの利用その他の適切な方法で周知します(同条2項)。合理性を理由とする変更は、効力発生時期が来るまでに周知しなければ効力を生じません(同条3項)。延滞料の引上げや保証金の増額のように借主に不利な変更では、この条件の確認が欠かせません。
規約例規約の適用と変更
- 本規約は、貸主が提供するレンタルサービス(以下「本サービス」という。)に関する、貸主と借主との間のすべての貸出契約に適用する。借主は、申込みの前に本規約の内容を確認し、本規約を貸出契約の内容とすることに同意したうえで、申し込むものとする。
- 借主が、申込みの画面で本規約に同意する旨の欄を選択して申込みを送信したときは、借主は、本規約を貸出契約の内容とすることに同意したものとする。
- 貸主は、民法第548条の4の規定に従い、本規約を変更することができる。この場合、貸主は、変更後の本規約の効力発生時期を定め、変更する旨、変更後の内容及び効力発生時期を、貸主のウェブサイトへの掲載その他の適切な方法により、効力発生時期の前に周知する。
- 借主に不利益な変更は、効力発生時期より前に成立した貸出契約には、借主が同意したときに限り適用する。
第4項は、既存の貸出契約への適用を貸主が自ら絞る設計の例です。変更の効力を既存の契約にも広げるか、新規の申込みからにするかは、貸出の期間の長さに応じて決めます。
定型約款の考え方が当てはまらない場面もあります。高額な機材を一件ずつ条件を話し合って貸すとき、友人・知人に一度だけ貸すときは、不特定多数を相手にした画一的な取引ではないため、定型取引にあたりません。そのような貸し出しは、個別に合意した内容を貸出覚書などの書面に残す形が向いています。
借主が消費者か事業者か:効く法令が変わる
消費者契約法は、消費者と事業者との間の契約に適用されます。「消費者」は、個人のうち、事業として又は事業のために契約の当事者となる場合を除いたものです(同法2条1項)。個人が借りても、仕事のために借りるのであれば事業者の側に入ります。たとえば、趣味で旅行に使う機材を借りる個人は消費者で、仕事の撮影に使うために機材を借りる個人事業主は事業者です。同じ品物でも、借りる目的で分かれます。
申込みの段階では、どちらなのかが分からないことがあります。規約の作り方は二つあります。消費者向けと事業用で規約を分ける方法と、一本の規約を、消費者に適用される規制に合わせて作る方法です。個人向けのレンタルでは、後者のほうが運用が単純で、無効とされる条項を後から手直しする手間も減ります。消費者に合わせて作った規約は、事業として借りる人にも通用します。
借主の立場による、条項への主な規律の違い
| 場面 | 借主が消費者のとき | 借主が事業として借りるとき |
|---|---|---|
| 貸主の責任を免除する条項 | 消費者契約法8条により、貸主の債務不履行責任を全部免除する条項は無効。貸主の故意・重過失による場合の一部免除も無効。 | 同法は適用されない。民法1条2項(信義則)、90条(公序良俗)や、定型約款では548条の2第2項で見る。 |
| 延滞料・弁償金など、金額を予定する条項 | 消費者契約法9条(解除に伴う違約金の平均的な損害、支払遅延の年14.6%)と10条で審査される。 | 民法420条の賠償額の予定として有効に定められる範囲が広い。著しく過大なものは公序良俗(90条)の問題になる。 |
| 申込み画面での操作ミス | 電子消費者契約法3条により、確認を求める画面がないと、重大な過失があっても錯誤による取消しを妨げられないことがある。 | 同法は消費者のみが対象で、事業として借りる人には適用されない。 |
消費者契約法で押さえておく条文は、四つです。8条(貸主の責任を免除する条項の無効)、9条1号(解除に伴う損害賠償の額の予定・違約金のうち、同種の契約の解除に伴い事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える部分の無効)、9条2号(金銭の支払が支払期日に遅れたときの損害賠償の額の予定・違約金のうち、年14.6%を超える部分の無効)、10条(消費者の権利を制限し、義務を加重する条項で、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものの無効)です。それぞれが、延滞、弁償、中途解約のどの場面で働くかは、各論のページで確かめます。
通信販売などの特定商取引法の規制が、レンタルにも及ぶのかどうかは、条文と所管官庁の資料で確認が必要な点です。料金や返品の特約をどこに表示するかとあわせて、レンタルの料金・日割・延長・送料の表示で整理します。
決める項目の一覧:規約に置く順序と、各論の置き場所
規約の条は、貸出の流れに沿って並べると読みやすくなります。申込みと成立、料金、引渡し、利用中のルール、返却、検品と精算の順です。借主が規約を開いたときに、いま自分がどの段階にいるのかを探しやすい並びにします。
貸出から返却・精算までの流れ
- 申込み規約の表示と同意、本人・年齢の確認、申込内容の確認画面
- 契約の成立申込完了の通知を送った時に成立。配送の手配
- 引渡し到着と外観の確認。貸出期間の起算
- 利用用法、禁止事項、延長、中途解約
- 返却返却完了の基準日、延滞、返却品のデータの消去
- 検品・精算損傷の確認、保証金の返還、弁償金・延滞料の請求
規約を作る前に決めておく項目
- 貸出品の特定(品名、型番、付属品、数量)と、貸す契約の型(有償か無償か)。
- 申込みの成立時点(申込完了の通知を送った時に成立、など)。→ 申込みから引渡し
- 借主の資格(年齢、本人確認の方法、配送できる地域)。
- 料金(貸出料金、日割・延長・送料、支払いの時期と方法)。→ 料金の表示
- 貸出期間の起算日、返却期限、返却完了の基準日、延長の手続。→ 延滞料
- 用法と禁止事項(又貸し、分解、改造)。→ 又貸し・改造の禁止
- 破損・紛失の弁償額の算定方法、補償オプション、返却時の検品。→ 破損・紛失の弁償
- 保証金を預かるか、返還の時期と控除できる費目。→ 保証金・デポジット
- 中途解約、最低利用期間、解除、返金。→ 中途解約と最低利用期間
- 個人情報の扱いと、返却品に残るデータ。→ 返却品のデータ
- 貸出品による事故と、貸主の責任、免責の範囲。→ 貸出品による事故
条を並べるときの原則は、同じ内容を複数の条に書かないことです。免責の条項が申込み、引渡し、返却の各条にばらまかれていると、どれが優先するのか読み取れなくなります。免責は一か所にまとめます。延滞料、弁償金、保証金も、性質の異なる金銭として、別々の条にします。
書き方の例(一般的な例) 性質の違う金銭を一文に混ぜない
延滞・破損・保証金の条
理由三つの金銭を一文に混ぜると、算定方法がどこにも書かれず、「適当と認める金額」という白紙の差引きになります。条を分け、算定方法と明細の通知を書くと、借主にも貸主にも根拠が見えます。
画面で同意を取るとき:何を、どれだけの期間残すか
契約は、申込みに対して相手方が承諾したときに成立し、法令に特別の定めがある場合を除いて、書面の作成などの方式は要りません(民法522条)。画面の申込みなら、署名入りの契約書がなくても貸出契約は成立します。ただし、揉めたときに「この規約に同意して申し込んだ」「この内容の貸し出しだった」と示せるのは、貸主の手元に記録があるときだけです。記録を残す仕組みは、規約の文面と同じくらい大事です。
画面で申込みを受けるときに残しておく記録
規約は変更するたびに版を残します。借主の貸出契約には、申込みの時点の版が適用されるのが基本です。どの版に同意した申込みなのかが分からないと、規約の変更の条(民法548条の4)の要件を満たす変更をしても、誰にどの条項が効くのかが説明できません。
保存する期間の目安は、請求できる期間から逆算します。債権は、権利を行使できることを知った時から5年、行使できる時から10年のどちらかが先に来ると、時効で消滅します(民法166条1項)。貸主が持つ料金、延滞料、弁償金の請求権も、借主が持つ返金の請求権も、この時効にかかります。個人情報を含む記録は、利用目的の達成に必要な範囲を超えて持ち続けないよう、利用する必要がなくなったときは遅滞なく消去するよう努めることも求められています(個人情報保護法22条)。「いつまで、どの記録を残すか」は、時効と個人情報の両面から、あらかじめ決めておきます。
申込み画面そのものの作りにも、法律上の意味があります。消費者が画面を通して行う電子消費者契約で、数量や期間を誤って入力したなどの操作ミスがあり、それが重要なものであるときは、錯誤が表意者の重大な過失によるものでも取消しの主張が妨げられないという特例があります(電子消費者契約に関する民法の特例に関する法律3条。民法95条3項の不適用)。ただし、貸主が、画面上で申込みの意思の有無を確認する措置を講じたときは、この特例は働きません(同条ただし書)。申込み内容の確認画面を設けて、「この内容で申し込む」を押させる作りにしておくのは、このためです。
確認の問い申込み画面と規約について、確認しておく問い
申込みボタンの近くに、規約を契約の内容とする旨と、規約の全文を開くリンクを表示していますか。
民法548条の2第1項は、規約を契約の内容とする旨の合意か、あらかじめの表示を、規約が契約の内容になる条件にしています。
申込み内容(品名、数量、期間、料金)を一覧にした確認画面を、送信の前に出していますか。
確認を求める措置があれば、電子消費者契約法3条の特例は働きません。入力ミスによる取消しの主張を避ける最も簡単な方法です。
同意した規約の版を、申込みごとに記録していますか。
規約を変更したときに、どの申込みにどの条項が適用されるのかを説明できなくなるのを防ぎます。
借主が個人か事業者かを、申込みの時点で尋ねていますか。
消費者契約法が働くかどうかは借主の立場で決まります。尋ねない場合は、消費者に適用される規制に合わせて規約を作る前提で進めます。
記録の保存期間を、請求権の時効(民法166条1項)と個人情報の消去の努力義務の両方から決めていますか。
短すぎると請求の裏付けがなくなり、長すぎると個人情報を必要以上に持つことになります。
起きがちなこと:型・規約・記録の取り決めが足りないとき
全体設計で起きがちなこと
場面規約の表題と中身が合っていない
起きがちなこと「サービス利用規約」とあるだけで、貸す物、貸出期間、返す義務が読み取れない。返却や破損の条項が、売買のような書き方になっている。
規約で手当てすること冒頭に、有償で貸す、特定したレンタル品を借りる、終了時に返す、の三点を一文で置き、定義語(貸主、借主、レンタル品)を初出の箇所で定義する。
場面規約の変更を一方的に通知するだけにしている
起きがちなこと料金の改定や延滞料の引上げを、サイトのお知らせに載せただけで、既に貸出中の借主にも適用しようとする。
規約で手当てすること民法548条の4の要件(一般の利益に適合する、または合理的な変更)と周知の方法を規約に書き、不利益な変更を既存の契約に及ぼすかどうかを決めておく。
場面同意の記録が残っていない
起きがちなこと揉めたときに、どの版の規約に同意して申し込んだのかを示せない。確認画面がなく、数量の入力ミスの取消しを主張される。
規約で手当てすること申込みごとに、規約の版、同意の操作、申込完了の通知を記録し、確認画面を設ける。
場面借主の立場を考えずに規約を作っている
起きがちなこと個人の趣味の利用者に、事業者向けの感覚で、責任を全部免除する条項や、高額の違約金を置いている。
規約で手当てすること消費者契約法の8条・9条・10条を基準に、条項を見直す。借主の立場の確認欄を設けるか、消費者に合わせて一本化する。
場面料金・延滞料・弁償金・保証金が混ざっている
起きがちなこと一つの条に複数の金銭が書かれ、差し引きの根拠が「貸主が定める」としか書かれていない。
規約で手当てすること金銭の性質ごとに条を分け、算定方法、上限、明細の通知を書く。各論は、延滞料・弁償金・保証金のページで確かめる。
個別の取引への当てはめは、貸し出す物の種類や契約の内容によって異なります。
よくあるご質問
個人向けのレンタルで、規約だけで契約書は作らなくてもよいですか?
どちらの形でも契約は成り立ちます。契約の成立に書面の作成は要りません(民法522条2項)。画面で申込みを受ける事業では、規約を契約の内容とする旨を申込みの前に表示し、同意の操作を残す形が一般的です(民法548条の2第1項)。一件ずつ条件を話し合って貸す高額な機材や、友人・知人への一度きりの貸し出しでは、規約より、貸出品、期間、返す時期、壊したときの扱いを書いた貸出覚書のほうが向いています。
月額制の「サブスク」のレンタルも、賃貸借ですか?
法律上の型の名前は「賃貸借」で、「サブスク」は料金の払い方と更新の仕組みを指す呼び方です。物を使わせて料金を受け取り、終わったら返してもらう中身は賃貸借で、期間を月単位で更新していく形になります。交換や保守などの役務が料金に含まれるときは、賃貸借に役務の約束が組み合わさった契約と整理されます。最低利用期間や解約手数料は、レンタルの中途解約と最低利用期間で説明しています。
個人事業主がレンタルするとき、消費者契約法は適用されますか?
借りる目的によって変わります。消費者は、個人のうち、事業として又は事業のために契約の当事者となる場合を除いたものです(消費者契約法2条1項)。仕事のために借りる個人事業主は事業者の側に入り、同法は適用されません。申込みの時点で目的が分からない場合は、消費者に適用される規制に合わせて規約を作っておくと、どちらの借主にも通用します。
規約を後から変更して、既に借りている人にも適用できますか?
定型約款にあたる規約は、変更が借主の一般の利益に適合するとき、または契約の目的に反せず、変更の必要性と内容の相当性などに照らして合理的なときに限り、個別の合意なしに変更できます(民法548条の4第1項)。変更するときは、効力発生時期を定め、変更する旨、変更後の内容、効力発生時期をインターネットの利用その他の適切な方法で周知する必要があります(同条2項)。借主に不利な変更を既存の契約に及ぼすかどうかは、規約に決めておくと運用しやすくなります。
画面で同意を取った記録は、どれくらいの期間残せばよいですか?
法律が一律の期間を定めているわけではありません。貸主の料金、延滞料、弁償金の請求権や、借主の返金の請求権は、権利を行使できることを知った時から5年、行使できる時から10年で時効消滅する(民法166条1項)ため、この期間を意識して決めます。一方で、個人情報を含む記録は、利用する必要がなくなったときに遅滞なく消去するよう努める必要があります(個人情報保護法22条)。申込内容、規約の版、同意の記録は長めに、確認書類の画像は短めに、と記録ごとに分けて決めるのが現実的です。
あわせて読みたいページ
本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、貸し出す物の種類、契約の内容、借りる方が消費者か事業者かによって異なることがあります。条文は e-Gov法令検索(法令API)で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 消費者庁 / 国民生活センター / 個人情報保護委員会