レンタルの保証金・デポジット

貸出しの前に預かる保証金は、何を担保し、いつ、いくら返すのかが決まっていないと、返却のあとに揉めごとになります。返還の時期、差し引ける費目、カードの与信枠での担保の書き方を整理します。

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「保証金」という名前でも、貸す契約の債務を担保するために交付する金銭なら、民法の敷金の定義に当たり得ます。名目ではなく、返還の時期と差し引ける費目を決めておくことが、規約の中心です。

このページの要点

  • 保証金は、名目を問わず、借り手の金銭債務を担保する目的で交付する金銭なら、敷金の定義(民法622条の2第1項)に当たり得る。使用料の前払いや違約金とは分けて預かる。
  • 返還は、賃貸借が終了し、かつ物の返還を受けたときに、債務を差し引いた残額を返す。「返還を受けた」時点を言葉で決め、返還の期限の目安と明細の出し方も書く。
  • 差し引ける費目は列挙し、他の条項で定めた金銭債務に対応させる。通常の使用による傷みの清掃費や、保証金を一律に没収する書き方には注意する。
  • カードの与信枠で担保するときは、金銭の交付ではない旨、取消しの時期、請求の範囲を書く。借り手が充当を請求できない旨(同条2項)も明記する。

結論:保証金は「何を担保し、いつ、いくら返すか」を先に決めておく

家電、カメラ、ベビー用品、衣装などを貸す事業では、貸出しの前に「保証金」や「デポジット」を預かることがあります。破損や紛失、返却の遅れに備えて、借り手から一定の金額を預かっておく仕組みです。事業者にとっては安心材料になりますが、返還の時期が書かれていない、差し引ける費目が「貸主が必要と認めるもの」としか書かれていない、差し引いた後の明細が出ない、といった状態では、返却の後に「保証金が戻ってこない」という申出が出やすくなります。

保証金の規約で最初に確かめるのは、次の四点です。第一に、保証金が何の債務を担保するのか(使用料、延滞料、弁償金など)。第二に、返還の時期(いつ戻すのか)。第三に、差し引ける費目と、差し引いたときの明細の出し方。第四に、現金で預かるのか、クレジットカードの与信枠で担保するのか。この四点を規約に書き、申込みの画面にも同じ内容で示しておくと、保証金に関する揉めごとの多くは、入口で避けられます。

保証金やデポジットという呼び名は、法律の用語ではありません。貸す契約に基づく借り手の金銭債務を担保する目的で、借り手が貸主に交付する金銭は、名目を問わず、民法622条の2第1項の「敷金」の定義に当たり得ます。この条文は賃貸借の節に置かれていて、条文の文言上、貸す物が不動産のときだけに使える規定とはされていません。ここから、返還の時期、返還する額、貸主が弁済に充てられる範囲、という保証金の基本のルールが出てきます。

このページは、物品を貸す場面に絞って書きます。貸す契約の型の全体像は個人向けレンタルの規約・契約書の全体像、延滞料の考え方は延滞料のページ、破損や紛失の弁償額は壊した・なくしたときのページで扱います。保証金は、これらの金額を回収するための「担保」であって、延滞料や弁償金そのものではない、という整理が出発点です。借り手が個人(消費者)のときは、消費者契約法の見方も加わります。

保証金・デポジットは「敷金」の定義に当たり得る:名目より中身で決まる

民法622条の2第1項は、敷金を、いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭、と定めています。この定義を分けて読むと、三つの要素があります。

  • 担保の目的:交付した金銭が、借り手の債務を担保するためのものであること。
  • 担保される債務:賃料(使用料)のほか、賃貸借に基づいて生ずる、金銭の給付を目的とする債務であること。延滞料や弁償金は、金銭の支払を内容とする債務です。
  • 交付される物:金銭であること。

名前が「保証金」でも「預り金」でも「安心保証金」でも、中身が上の三つに当たるなら、同じ扱いになり得ます。反対に、名前が保証金でも、実際には使用料の前払いや、キャンセルしたときの違約金として預かっているなら、別の整理が必要です。物を貸す事業で預かるお金には、次のような種類があり、それぞれ返還の考え方が違います。

貸出しの前後で預かる金銭の種類と、返還の考え方

種類預かる目的返還の考え方規約に書くこと
保証金(デポジット)借り手の金銭債務(延滞料・弁償金など)を担保する返還を受けたときに、債務を差し引いた残額を返す返還の時期、差し引ける費目、明細の出し方
前払いの使用料貸す期間の使用の対価を先に受け取る使用の対価なので、期間が終われば返還の対象にならない計算の方法、期間の途中でやめたときの扱い(中途解約のページ)
違約金・損害賠償額の予定債務不履行があったときの賠償額を決めておく預かるものではなく、発生したときに請求するもの発生の条件と額の根拠(延滞料のページ)
事務手数料・送料手続や配送の対価対価なので返還の対象にならない何に対する対価か、いくらか(料金表示のページ)

この表の最上段だけが、保証金の規約の対象です。ほかの三つを保証金の名目で預かると、返す・返さないの判断が曖昧になり、借り手から見て何のためのお金か分からなくなります。入口の段階で、名称と目的を分けて表示しておくと、後で説明がしやすくなります。

担保される債務の範囲についても、条文の文言から読み取れることがあります。条文が担保の対象とするのは、金銭の給付を目的とする債務です。物を返す義務そのものは、金銭の支払を内容としません。そのため、返却されなかったときに、弁償金や使用料相当額などの金銭の債務になった部分が、保証金から差し引く対象になると整理するのが素直です。この区別を意識すると、規約の控除の条項を「何が金銭債務になったときに差し引くのか」という形で書けます。

条文と異なる定めを規約に置くこと自体はできますが、借り手が消費者のときは、消費者契約法10条の判断を受けます。同条は、法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比べて、消費者の権利を制限し、又は義務を加重する条項で、民法1条2項の基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものを、無効とします。返還の時期を不当に先送りする条項や、返還しないと定める条項は、この観点から見直す対象になります。

返還の時期と返還額:「返還を受けたとき」を決め、残額と明細を返す

民法622条の2第1項は、貸主が敷金を受け取っている場合に、次の二つの場面で、受け取った額から借り手の金銭債務の額を差し引いた残額を返さなければならないと定めています。一つ目は、賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。二つ目は、借り手が適法に賃借権を譲り渡したときです。物品のレンタルでは、二つ目は通常問題になりません。実務で意味を持つのは、一つ目の「賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき」です。

返却を配送で行う貸出しでは、この「返還を受けたとき」がいつなのかが、まず曖昧になります。借り手が荷物を発送した日なのか、貸主の倉庫に着いた日なのか、検品が終わった日なのか。条文の文言は「返還を受けたとき」ですから、借り手が発送した時点ではなく、貸主が物を受け取った時点を基準にするのが自然です。ただし、規約に何も書かれていないと、借り手は「送ったのだから返した」と考え、貸主は「検品が終わるまでは受け取っていない」と考えて、ずれが生じます。規約では、貸主の指定する場所に到着して貸主が受け取った時、というように、返還を受けた時点を言葉で決めます。

この基準は、返却の遅れを数える基準とそろえておくのが重要です。返却完了の基準日を発送日にするのか到着日にするのかは延滞料のページで整理しています。延滞料の計算の終点と、保証金の返還期限の起点が別々の考え方だと、借り手は何を基準にしてよいか分からなくなります。

次に、返還の期限です。民法622条の2は、返還の義務が生じる場面を定めていますが、「何日以内に返す」という期限そのものを数字で定めてはいません。規約で期限を定めないと、検品や調査を理由にいくらでも先に延ばせるかのような運用になりがちです。検品に必要な期間を見込んだうえで、「返還を受けた日から一定の日数以内」というように、期限の目安を置くのが、借り手にも貸主にも分かりやすい書き方です。検品が長引く特別な事情があるときの連絡の仕方(遅れる旨と理由、見込みの日)も書いておくと、問い合わせが減ります。

保証金の返還までの流れ(配送で返却する場合)

  1. 返却の発送借主が貸出品を発送し、追跡番号などを貸主に知らせる。
  2. 貸主の受領貸出品が貸主に届き、貸主が受け取った日を記録する。ここが「返還を受けた」時点。
  3. 検品付属品の有無、破損の有無を確かめ、写真などの記録を残す。
  4. 控除額の確定未払いの使用料、延滞料、弁償金など、規約に定めた費目だけを集計する。
  5. 明細の通知控除の項目、数量、単価、金額を借主に知らせる。
  6. 残額の返還保証金から控除額を差し引いた残額を、定めた方法で返す。

各段階の日数は、貸出品の種類と検品の手間に合わせて決めます。借主に伝える日数は、実際に守れる日数にします。

返還の方法も書いておきます。現金書留で預かったのか、銀行振込で預かったのか、クレジットカードで決済したのかによって、返す手段が変わります。一般には、預かったときと同じ手段で返すのが分かりやすく、銀行振込で返すときの振込手数料を誰が負担するのか、借り手の指定口座の誤りで返せなかったときにどうするのか、も定めておく必要があります。あわせて、保証金には利息を付けない旨を書くのが通常です。

規約例保証金に関する規約の例(現金で預かる場合)

  1. 借主(物を借りる者をいう。以下同じ。)は、貸主(物を貸す者をいう。以下同じ。)に対し、本契約(物の貸出しに関する契約をいう。以下同じ。)に基づく借主の金銭の支払の債務を担保するため、貸出品(貸主が借主に貸し出す物をいう。以下同じ。)の引渡しまでに、貸主が定める額の保証金(以下「保証金」という。)を預託します。
  2. 貸主は、本契約が終了し、かつ、貸出品の返還を受けたときは、保証金の額から次条に定める控除の額を差し引いた残額を、貸出品の返還を受けた日から一定の日数以内に、借主に返還します。貸出品の返還を受けたとは、貸出品が貸主の指定する場所に到着し、貸主がこれを受け取ったことをいいます。
  3. 貸主は、前項の返還にあたり控除を行うときは、控除する項目、数量、単価及び金額を記載した明細を、借主に通知します。
  4. 保証金には利息を付しません。保証金の返還は、保証金を預託したときと同じ方法で行います。振込によるときの手数料は、貸主の負担とします。

第2項の後段で、「返還を受けた」時点を言葉で決めています。この定義は、返却の遅れを数える基準と同じ言葉にそろえます。

差し引ける費目:列挙して、上限と明細をつける

保証金の規約で、いちばん争いになりやすいのは、何を差し引けるのかです。貸主が「必要と認める費用」「貸主が定める損害額」を差し引ける、という書き方は、費目も金額も貸主の判断に委ねていて、借り手から見て予測がつきません。差し引ける費目は、あらかじめ列挙しておくのが基本です。物品のレンタルで、一般に列挙の候補になるのは、次のようなものです。

  • 未払いの使用料(延長した期間の使用料を含む)
  • 延滞料(考え方は延滞料のページ)
  • 破損・紛失に対する弁償金(算定の方法は壊した・なくしたときのページ)
  • 返却されなかった付属品の代金
  • 規約で借主の負担と定めた、返送の送料などの費用

列挙した費目は、保証金から差し引く対象であると同時に、規約のほかの条項で借主の負担と定められている金銭債務であることが前提です。保証金の条項だけで新しい費目を作ることはできません。たとえば、弁償金の算定の方法が弁償金の条項に書かれていないのに、保証金の条項で「弁償金を控除する」とだけ書いても、金額の根拠は示せません。控除の条項は、他の条項で定めた債務を回収する手続の条項です。

清掃費の扱いには注意が必要です。貸出品は、借り手が通常の使い方をしても、使用によって多少の汚れや摩耗が出ます。賃貸借では、通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗や経年変化は、借り手が負わないものとされています(民法621条)。通常の使い方の範囲の汚れまで、清掃費として保証金から差し引くと、通常損耗を借り手に負担させる結果になり、争いになりやすくなります。清掃費を定めるなら、使用料に含まれる通常の清掃と、追加の清掃が必要になる汚れ(規約で基準を示した範囲)を分けて書きます。損耗の考え方は壊した・なくしたときのページで詳しく扱います。

書き方の例(一般的な例) 保証金から差し引く費目の書き方

差し引ける費目

よくある書き方貸主が必要と認めた費用を、保証金から差し引くことができる。
整えた書き方次の金銭を、保証金から差し引くことができる。(1)未払いの使用料 (2)延滞料 (3)弁償金 (4)返却されなかった付属品の代金。差し引く場合は、項目ごとの数量、単価及び金額の明細を通知する。

理由費目と明細が分かれば、借り手は差引き額を確かめられます。貸主の判断だけに委ねる書き方は、予測できない負担を借り手に負わせます。

保証金で足りないとき

よくある書き方不足額は直ちに支払うものとし、支払わない場合は保証金を没収する。
整えた書き方保証金で足りない金額は、その金額の根拠を示して別に請求する。保証金は担保であり、違約金として没収するものではない。

理由担保として預かった金銭を違約金に切り替えると、性質が変わります。借り手が消費者のときは、消費者契約法9条1項1号・10条の見直しの対象です。

保証金で足りない場合の整理も重要です。破損が大きくて、弁償金が保証金の額を超えることがあります。この場合、超えた分は、弁償金の債務そのものとして請求することになります。保証金の条項に、不足額は別途請求できる旨を書いておくと、手続が分かりやすくなります。反対に、「違約があったときは保証金を全額没収する」「保証金は返還しない」という書き方は、保証金の性質を担保から違約金に変えてしまいます。民法420条3項は、違約金は賠償額の予定と推定すると定めています。借り手が消費者で、解除に伴って没収されるときは、消費者契約法9条1項1号により、同種の消費者契約の解除に伴い事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える部分が無効になります。解除に伴わない場合も、同法10条の見直しの対象になり得ます。実際の損害と無関係に、一律で全額を没収する書き方は、根拠を説明しにくい条項です。

保証金の精算書の例

  • 預かっていた保証金○円申込み時に預託を受けた額
  • 未払いの使用料○円延長した期間 ○日分 × 日額
  • 延滞料○円返還期限の翌日から受領日まで ○日分
  • 弁償金○円付属品 ○点の欠品。単価 × 数量。写真を添付

返還する額○円

控除の合計と、返還する額を、必ず別の行で示します。金額は具体的な数字で書き、根拠になる日数や数量を説明欄に添えます。

カードの与信枠での担保:現金を預からない場合の書き方

保証金を現金で預かる代わりに、借り手のクレジットカードの与信枠(利用可能額)の一部を確保しておく方法があります。申込みのときに、カード決済の仕組みを通じて保証金相当の額の与信を確保しておき、現金は動かしません。返却と検品が済んで、控除する債務がなければ、与信枠の確保を取り消します。控除する債務があれば、その額に限って、実際にカードに請求します。借り手にとっては先に現金を払う必要がなく、貸主にとっては返還の手続や返金の手間が減る方法です。

この方式でも、規約に書くことは現金の保証金と大きくは変わりません。ただし、現金のやりとりがないぶん、次の点を丁寧に書く必要があります。

  • 借り手の利用可能額が減ること:確保した間は、借り手がそのカードで使える額が、その分だけ減ります。申込みの画面で、確保する額と、確保の目的を表示します。
  • 確保の取消しと反映の時期:貸主が取消しの手続をした後、借り手のカードの利用可能額に反映されるまでの期間は、借り手が契約するカード会社と、決済サービスの仕組みによって異なります。貸主が決められない部分なので、規約には貸主が取消しの手続を行う時期までを書き、反映の時期は借り手のカード会社の定めによる旨を添えます。決済サービスごとの仕様は、各サービスの案内と加盟店向けの規約で確認が必要です。
  • 確保できる期間:与信の確保には、決済の仕組みによって期間の限りがあることがあります。貸出期間が長いときは、確保を取り直す必要が出るため、その手順と借り手への連絡を決めておきます。
  • 与信が通らなかったとき:カードの限度額や状態により、確保ができないことがあります。この場合に、申込みを成立させないのか、別の担保(現金の保証金)に切り替えるのかを決めておきます。
  • 請求の範囲:実際に請求するのは、債務の額が確定した後で、その額の範囲に限ります。保証金の額を超える債務があるときは、超える部分を別に請求します。

民法622条の2は、「金銭を交付する」ことを敷金の要素としています。与信枠の確保は、借り手から貸主へ金銭が渡るわけではありませんから、同条の「交付する金銭」にそのまま当てはまるかどうかは、決済の仕組みや契約の内容によって見方が分かれ得ます。そこで、条文の当てはめを断定するのではなく、規約では、現金の保証金と同じ水準の取り決め、つまり担保する債務、取消しの時期、請求の範囲、明細の出し方を書いておくのが整った書き方です。

規約例与信枠の確保による担保に関する規約の例

  1. 借主(物を借りる者をいう。以下同じ。)は、貸主(物を貸す者をいう。以下同じ。)に対し、本契約(物の貸出しに関する契約をいう。以下同じ。)に基づく借主の金銭の支払の債務を担保するため、借主が指定したクレジットカードについて、貸主が定める額の与信枠の確保(以下「与信枠の確保」という。)を認めます。与信枠の確保は、借主から貸主に金銭を交付するものではありません。
  2. 貸主は、貸出品(貸主が借主に貸し出す物をいう。以下同じ。)の返還を受けて検品を終えたときは、次項の請求の対象がない場合に、すみやかに与信枠の確保を取り消します。
  3. 貸主は、借主が本契約に基づいて支払うべき金銭で、与信枠の確保により担保される債務があるときは、その項目と金額の明細を借主に通知したうえで、その金額の範囲で、前項のクレジットカードに請求します。
  4. 貸主が与信枠の確保を取り消した後、借主のクレジットカードの利用可能額に反映されるまでの期間は、借主が契約するカード会社及び決済サービスの定めによります。

第1項の後段で、金銭の交付ではないことを明記しています。第4項は、貸主が決められない部分を、決められないものとして書いています。

確認の問いカードの与信枠で担保する前に確かめたいこと

  1. 申込みの画面で、確保する額と、その目的を表示していますか。

    借り手の利用可能額が減ることは、借り手にとって重要な事実です。画面と規約で同じ内容を示しておけば、後から「聞いていない」という争いが減ります。

  2. 確保の取消しの手続を行う時期を、規約に書いていますか。

    貸主が決められる部分は取消しの手続の時期までです。取消しの日付を借り手に知らせる運用にしておくと、反映が遅いという問い合わせに対応しやすくなります。

  3. 貸出期間が長くなったとき、確保を取り直す手順がありますか。

    決済の仕組みによっては、確保できる期間に限りがあります。期間が切れて保証がなくなるのを防ぐために、取り直しの手順と借り手への連絡を決めておきます。

  4. 与信が通らないときの扱いを決めていますか。

    申込みを成立させない、現金の保証金に切り替える、貸出しの内容を変更する、のどれにするかを決めておかないと、現場で判断が分かれます。

保証金を料金に充てる請求:借り手からの充当は求められない

民法622条の2第2項は、貸主が、借り手が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができると定めています。そのうえで、借り手は貸主に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求できない、とも定めています。つまり、充当するかどうかを決めるのは貸主で、借り手の側からは求められません。

この規定は、貸出しの終わり近くに起こりがちな場面で役に立ちます。借り手が、「最後の月の使用料は預けてある保証金から引いておいてほしい」と求めてくることがあります。条文のうえでは、貸主はこれに応じる義務を負いません。ただ、規約に何も書かれていないと、借り手は当然に充当できるものと思い込みやすく、断られたときに揉めます。保証金は担保であって使用料の前払いではないことを、規約に書いておきます。

書き方の例(一般的な例) 保証金の充当に関する書き方

借り手からの充当の請求

よくある書き方(定めなし)
整えた書き方借主は、保証金を、使用料その他の債務の支払に充てるよう、貸主に請求することはできない。

理由条文上、充当の請求はできません。規約に書いておけば、期待のずれを避けられます。

貸主による充当

よくある書き方貸主は、いつでも、保証金を債務の弁済に充てることができる。
整えた書き方貸主は、借主が本契約に基づく金銭の支払を遅れたときは、保証金を、その債務の弁済に充てることができる。充てたときは、その項目と金額を借主に通知する。

理由充当できる場面を債務不履行に限り、通知を付けると、借り手が自分の保証金の状況を把握できます。

充当をしたあとの保証金の扱いも、長期の貸出しでは決めておく必要があります。保証金を使用料の一部に充てたあとも貸出しが続くときは、保証金の額が減った状態になります。減った分を借り手に補充してもらうのか、補充を求めずに貸出しを続けるのかは、貸主の判断ですが、補充を求めるなら、求める事由と期限、応じなかったときの扱いを規約に書いておかないと、後から条項の根拠が問われます。使用料と保証金を混ぜないためには、画面と規約で、これらを別の項目として表示する必要があります。料金の内訳の書き方は料金の表示のページで整理しています。

保証金の規約を作る前に確かめる項目

  • 保証金が担保する債務(使用料・延滞料・弁償金など)を、規約の他の条項と対応させて列挙している。
  • 「返還を受けたとき」を、貸主が物を受け取った時点として言葉で定義している。
  • 返還の期限を、返還を受けた日から一定の日数以内と定め、返還の方法と手数料の負担も決めている。
  • 差し引くときは、項目・数量・単価・金額の明細を借主に通知することにしている。
  • 借り手が保証金の充当を請求できない旨と、貸主が充当できる場面を書いている。
  • 申込みの画面に、保証金の額、返還の時期、差し引く費目を、規約と同じ言葉で示している。

起きがちなこと:保証金が戻らない・戻したつもり、のすれ違い

保証金に関する問い合わせは、金額そのものよりも、「いつ戻るのか分からない」「何が引かれたのか分からない」という、説明の不足から生じることが多くあります。起きがちな場面と、規約や運用で手当てできることを整理します。

保証金の場面別:起きがちなことと手当て

場面返却の後

起きがちなこと貸出品が届いたのに検品が進まず、保証金の返還が何週間も遅れる。

規約で手当てすること返還の期限を、返還を受けた日から一定の日数以内と定め、遅れるときの連絡の仕方も決めておく。

場面差引きの通知

起きがちなこと「破損費用として差し引きました」とだけ書かれ、金額の根拠が分からない。

規約で手当てすること項目、数量、単価、金額、根拠になる写真や記録を、明細として添える。

場面付属品

起きがちなこと付属品が一点戻っておらず、借り手は入れたつもり、貸主は届いていないと考える。

規約で手当てすること貸出し時に付属品の一覧を渡し、返却時に受領の記録を残す。控除は一覧にある物に限る。

場面カードの与信枠

起きがちなこと貸主が確保を取り消したのに、借り手のカードの利用可能額がなかなか戻らない。

規約で手当てすること取消しの日付を借り手に知らせ、反映の時期はカード会社によって異なる旨を、申込み時に説明しておく。

場面キャンセル

起きがちなこと発送前にキャンセルしたのに、保証金は戻らないと言われる。

規約で手当てすること保証金は債務を担保するもので、キャンセルの条件は別に定めることを、分けて書く。

場面最終月

起きがちなこと借り手が、最終月の使用料は預けた保証金から引いてほしいと求める。

規約で手当てすること借り手は充当を請求できない旨を規約に書き、貸主の充当は債務不履行の場面に限る。

どの場面も、規約の文言だけでなく、画面での説明と、返却後の連絡の仕方がそろっているかが決め手になります。

保証金の規約でありがちな落とし穴

  • 返還の時期が「検品後すみやかに」とだけ書かれ、検品がいつ終わるのか決まっていない。
  • 差し引く費目が「貸主が必要と認めるもの」となっていて、借り手が予測できない。
  • 通常の使用でも生じる汚れや摩耗の清掃費を、保証金から差し引くことにしている。
  • 保証金を、キャンセルの違約金や解約手数料としても使う書き方になっている。
  • カードの与信枠の確保なのに、現金の保証金と同じ文言を使い、金銭の交付と読める。

よくあるご質問

保証金とデポジットと敷金は、同じものですか?

呼び名は違っても、貸す契約に基づく借り手の金銭債務を担保する目的で、借り手が貸主に交付する金銭は、民法622条の2第1項の敷金の定義に当たり得ます。条文は、いかなる名目によるかを問わない、としています。保証金の名目で預かっていても、使用料の前払いやキャンセルの違約金として預かっているなら、別の整理が必要です。何のために預かるお金なのかを規約で分けて書くことが、出発点です。

保証金は、いつまでに返さなければなりませんか?

民法622条の2第1項は、賃貸借が終了し、かつ賃貸物の返還を受けたときに、残額を返す義務が生じると定めています。「何日以内」という数字は条文にありません。そこで、規約で、返還を受けた日から一定の日数以内という形で期限の目安を定めておきます。検品に時間がかかるときの連絡の仕方も書いておくと、借り手の不安が減ります。

破損の弁償額が保証金より大きいときは、どうなりますか?

保証金は担保であって、弁償金の上限ではありません。弁償金が保証金の額を超えるときは、超える部分を、弁償金の債務そのものとして別に請求します。弁償金の算定の方法は、弁償金の条項に書いておく必要があります。保証金の条項に「不足額は別途請求する」と書いておくと、手続が分かりやすくなります。

クレジットカードの与信枠で担保する場合も、返還の規約は必要ですか?

金銭を預かるわけではないので、返還という形にはなりませんが、取消しの時期、請求の範囲、明細の出し方を書いておく必要があります。与信枠の確保が民法622条の2の敷金の定義にそのまま当てはまるかは、決済の仕組みや契約の内容によって見方が分かれ得るため、断定せず、現金の保証金と同じ水準の取り決めを置くのが整った書き方です。取消しから借り手のカードの利用可能額に反映されるまでの期間は、カード会社と決済サービスの定めによります。

「保証金は返還しない」と書いてよいですか?

保証金を担保ではなく違約金として扱う書き方になり、性質が変わります。違約金は賠償額の予定と推定されます(民法420条3項)。借り手が消費者で、解除に伴う場合は、消費者契約法9条1項1号により、同種の契約の解除に伴い事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える部分が無効になります。解除に伴わない場合も、同法10条の見直しの対象になり得ます。実際の損害と無関係に一律で返還しない書き方は、避けるのが無難です。

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